• 脳卒中の治療法
       
       - 脳梗塞
       - 脳出血
       - くも膜下出血


  • 脳の血管病変の治療法

       - 未破裂動脈瘤
       - 脳動静脈奇形
       - 動静脈瘻
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    治療概説
     
       
  • 内科的治療

      脳卒中の内科的な治療のポイントは脳の専門的な治療+全身管理です。脳卒中治療では障害された脳の機能障害を最小限にするという専門的な治療が不可欠ですが、同時に脳卒中に伴う全身への悪影響を最小限にするなど全身管理を行うという2本の大きな柱があります。言い換えますと、病気は脳に生じるのですが、脳の専門的な治療のみでは不十分で、肺炎、ストレス性潰瘍、心不全などの脳卒中に伴う合併症の予防を中心とする全身管理が必要です。実際、入院と同時に生じやすい合併症の予防に努め、合併症が生じた場合には早期に適切な対応をするという先手先手の治療を行うように心がけねばなりません。脳卒中の内科的治療には神経学的な脳の専門知識と、循環器病学や止血血栓学などを統合した脳卒中学(strokology)を修得した医師を、一般内科的な知識および豊富な経験を備えた医師がバックアップする態勢が望ましいと考えられます。

  • 外科的治療(開頭手術)

      全身麻酔下で頭蓋骨の一部に窓を開け、手術用顕微鏡を用いて脳深部を明るく照らし、術野を10〜30倍に拡大して神経や血管を1本ずつ確認しながら手術を行います。太さが1o以下の血管を吻合できるマイクロサージュリーの器具と技術で、脳動脈瘤クリッピング手術・脳動静脈奇形摘出術・脳内血腫除去術・頭蓋内外バイパス手術などを行います。いずれも長い歴史のある手術法で、技術的に完成の域に達し、これらの病気の治療のスタンダードとなっています。

  • 血管内治療

      大腿動脈(ふとももに手を置くと拍動を触れる大きな動脈です)からカテーテルと呼ばれる細い管を入れます。このカテーテルをx線透視装置で見ながら腹部大動脈を経て大動脈弓へ進めます。さらに脳を養う4本の脳動脈の中から病変部に至る動脈を選んで首のところまでカテーテルを進め、そのなかを通していろいろな道具や材料を使って血管の中から治療します。病変部が頭の中にある場合は、普通のカテーテルの中に直径1mm足らずの細くて柔軟なカテーテル(マイクロカテーテルと言います)を入れて、コンピューターで作成した患者さんの脳血管のロードマップをなぞるようにして、複雑な脳の動脈の中をいくつもの枝分かれを越えて注意深く進め、病変部に到達させます。このような脳血管のナビゲーションを行なうことで、開頭せずに正確で安全な治療が可能となります。元来、外科手術の困難な病変、高齢者、余病があり外科手術に耐え得ない患者さんを救うために開発された治療法ですが、安全性と有効性が認められて適応が広がっているところです。病変部を切開する必要がないため、患者さんの心身に対するストレスの少ない治療法であるとともに、費用対効果の高さも注目されています。
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      目次 > 治療法 > 脳卒中の治療  
       
      脳細胞は、血液の流れが途絶えると数分で完全に死んでしまいます。但し、1本の血管がつまっても、バイパスを通じて他の血管からある程度の血液が供給されるため、血流が急に完全に絶たれることはありません。血管がつまってから数時間の以内は、死んでしまった脳の部分の周りに、より広く死にかかった領域が広がっており、血流の悪いところから順に死んでいきます。言い替えると、この数時間の内に血流を復活させてやると、死にかかった部分は回復する可能性があります。脳梗塞の治療が一刻を争う理由です。但し、血流を再開させる治療方法は、脳梗塞を起こした原因、詰まった血管の種類、経過した時間などにより、すべてのタイプの脳梗塞に適応できるわけではありません。

    (1) 血栓溶解療法


      原則として脳塞栓症を対象とし、血栓を溶かす薬(線溶剤)を注入して詰まった脳の動脈を再開通させます。脳血栓に対しても線溶療法が行われることがありますが、動脈が細くなった所が再び閉塞することが多いので、血栓融解後に血管形成術が必要となります。既に死んでしまった脳の領域の広さ、まだ救える領域の広さなどを知るためのMRI診断法の研究が活発に行われています。現在のところ、効果が期待出来るのは以下の条件を満たすケースとされていて、これから外れるケースは脳梗塞部に出血を起こしたりして悪化する恐れがあります。

    (1-1) 内頚動脈系
        
        (a) 発症3―6時間以内
        (b) CT検査で梗塞を疑う異常がまだ出ていないこと
        (c) 脳血流検査で、血流低下が高度の領域が広がっていないこと
        (d) 血管撮影にて、側副血行路の発達が良好であること

    (1-2) 椎骨脳底動脈系: 発症より時間が経っていても、24時間以内であれば有効な症例があります。

      線溶剤は静脈から点滴投与する方法と、動脈から投与する2通りの方法があります。わが国の保健診療で認められた唯一の治療法は少量のUK(ウロキナーゼ)を点滴静注するやりかたで、これでは閉塞した動脈を再開通させる望みはありません。同じ点滴静注でもアメリカで開発されたrt-PA〔遺伝子組み替え組織プラミノーゲンアクチベータ〕の有効性は証明され、FDA(米国食品医薬品局)で認可されてから全米の脳卒中センターで急性期脳卒中治療が活発に行われるようになりました。動脈から投与する方法は、血管内治療の技術でマイクロカテーテルを頭蓋内の動脈まで進めてUkやrt-PAなどの線溶剤を注入します。比較的少ない薬剤の使用量で再開通をおこす率が高く、上記の基準にあったケースでは治療効果が期待出来ます。しかし、まだ薬事法で認可された治療法とはなっていません。

    なお、血栓溶解後、以下の治療が必要です

        - 抗凝固療法による再閉塞の予防
        - 厳重な血圧管理による出血性梗塞の予防

    血栓溶解療法を動画で説明します。ご覧になれない方は右のロゴをクリックしてフラッシュ・プレーヤーをインストールしてください。

    (2) 抗トロンビン治療

      発症48時間以内のアテローム血栓性脳梗塞(ラクナ梗塞)に1週間程度行います。

    (3) 抗血小板治療


      血液を固まらせる作用を持つ血小板の機能を抑えて血栓が出来るのを予防します。ラクナ梗塞(アテローム血栓性脳梗塞)の急性期に点滴投与します。
    また、神経脱落症候の回復、死亡率の減少と脳卒中の再発予防に効果があることが知られています。

    (4) 抗凝固療法(ヘパリン)

     
    心原性脳塞栓症の急性期再発予防としてヘパリンという血栓形成を予防する薬剤が効果があることが証明されています。主幹動脈閉塞による脳塞栓では、閉塞血管の再開通による出血性梗塞が生じる可能性を考慮して使用します。高度な出血性梗塞を予防するためには、ヘパリン使用中には血圧管理を十分注意して行います。

    (5) 血液希釈治療

     低分子デキストランは血液粘度を低下させ、側副血行路を介する血流の改善をもたらし、脳の血流を増やすことが知られています。

    (6) グリセロール治療

     グリセロールは主に心原性脳塞栓症で脳浮腫(はれ)の治療ために使用しますが、アテローム血栓性脳梗塞やラクナ梗塞で循環改善目的で使用することもあります。

    (7) 血圧管理

     脳梗塞では急性期は原則として降圧(血圧を下げること)はしません。脳梗塞の急性期には脳の自動調節能が障害され、脳血流が血圧に依存するので、急性期に降圧を行うと症候の悪化・梗塞巣の拡大を来す場合があるからです。但し、主幹動脈閉塞による脳塞栓で、抗凝固療法中には、高度な出血性梗塞を予防する目的で、降圧を行うことがあります。

    (8) 高気圧酸素治療

     高圧タンクによる高気圧酸素治療は血管が細くなったり、つまったりして、酸素が到達しにくくなった脳の隅々まで酸素を送り込み、脳細胞の働きを助ける目的の治療です。
     
    <注意点> 高気圧酸素治療は狭い治療室で行われるため重症で呼吸状態の悪い患者さんでは行えません。高圧タンク内は気圧が高くなるため、耳がつまったり痛くなったりすることがあります。一時的に鼓膜に小さな穴を開ける処置をします。酸素の使い過ぎも身体に負担がかかりますので、1日に2〜3時間に限っています。

    (9) 低体温療法

     脳の血流が途絶すると、鬱熱が起こり、脳のダメージがひどくなります。脳梗塞の動物実験で、脳の温度を3−5度低下させると神経細胞の保護効果があることが知られて低体温療法が注目されるようになりました。血流再開を達成できるまでの脳のダメージを少なく出来ることが期待されています。意識障害を伴う重症の脳梗塞に対し超早期に始めると有効であるという臨床報告が散見されるようになり、この方法の有効性を確認するための臨床治験も始まりました。
     問題は全身麻酔が必要で、集中治療室で管理しなければならないこと、肺炎などの全身的合併症を起こしやすいことです。患側の脳のみを冷やす簡便なシステムの開発などの技術革新によって、発展する可能性はあります。

    (10) リハビリ開始の目安について

     運動麻痺による関節拘縮の予防は発症直後より重要であり、良肢位を保ち、他動的な運動によるリハビリが必要です。臥床による麻痺側の筋力低下、筋萎縮の予防のためにも早期リハビリが重要です。さらに、高齢者では臥床に伴う心肺機能低下が早期に起こりやすく、肺炎や膀胱炎の合併さらに褥創等を生じ易いので、早期より起座訓練が大切です。ベット上で臥床状態で行えるリハビリは発症急性期から行いますが、発症7日程度は症状の進行防止のために、起立および歩行訓練などは行わず、原則として安静とします。但し、高齢者では2日間程度症状の進行がなければ、安静を解除してできるだけ早期リハビリを開始します。


    (a) 外科手術


      (a-1) 頚動脈内膜剥離術

     頚部での内頚動脈高度狭窄の場合は、全身麻酔下に頸部の血管を切開して、内膜に沈着したアテローム病変を切離除去し、血液の流れを改善します。

      (a-2) 頭蓋内外バイパス手術

     内頚動脈、中大脳動脈などがすでに閉塞しているにもかかわらず、まだ大きな脳梗塞に至っておらず脳に対する血液量が不十分な場合に限っては、今後の脳梗塞の予防を期待しバイパス手術が行われます。一般的には頭皮に血液を送っている血管の一本である浅側頭動脈(耳介の前を指で触ると拍動している血管)を剥離して、頭蓋骨の小さい窓を通して、頭蓋内に移動し脳表の中大脳動脈皮質枝と吻合します。手術直後のバイパスを介する血液量は微量ですが、次第に増加します。このバイパス手術の適応に関しては国際共同研究で、内科的治療より十分優るとまでの結果が出なかったため、現在ではより個々の病態を慎重に検討して適応を決めています。また、巨大動脈瘤の手術など、より大量の血液が流れるバイパスが必要な場合には、下肢から採取した静脈片を用いてバイパス手術を行います。モヤモヤ病の小児に対しては、一般的な動脈硬化病変とは異なるため、血管吻合の他に硬膜の反転、筋肉挿入などの方法を用いて、側副血行を増加させ脳梗塞を予防します。

    (b) 血管内治療

      わが国でも生活様式の西欧化にともなって、内頚動脈が頭蓋内に入るまでの首の部分での動脈硬化による病変が増えてきました。細くなったところの先端に風船のついたカテーテルを入れて膨らませて動脈を広げ、十分な血液の流れを回復させる血管形成術が近年めざましい進歩を遂げてきました。元来は高齢者や心臓病などの余病があって手術に耐え得ない患者さん、高い位置に病変があって外科手術が難しい患者さんのために開発された治療法です。さらに、ステントと呼ばれる金属の筒を留置するようになって安全性と有効性が確立されて来ました。現在進行中の大規模な臨床テストでそれが証明されれば、外科手術にとって代わる強力な治療法になる可能性があります。頭蓋内の病変にたいしては血管形成術のリスクがまだかなり高いので、頭蓋内外バイパス手術の方が優先されます。

    風船療法・ステント療法を動画で説明します。ご覧になれない方は右のロゴをクリックしてフラッシュ・プレーヤーをインストールしてください。
     
           
     
     
    目次 > 治療法 > 脳卒中の治療
     
       
      脳出血(脳内出血)の治療は原因疾患、出血の起こった部位、大きさ、患者さんの年齢と合併症の有無などによって異なります。ここでは脳出血の主なタイプである高血圧性脳内出血の治療について述べます。治療の基本は開頭手術をしない内科的な治療ですが、出血した場所と大きさ、それに患者さんの状態によっては血腫(血の塊)を除去するため、定位的外科手術や脳内視鏡による外科手術を行う必要もあります。

      出血によって破壊された脳は元に戻すことは出来ません。治療のターゲットは脳への圧迫を緩和すること、再出血の防止と血腫の周囲の脳の浮腫(はれ)を抑え、頭蓋内圧が上がるのを防止すること、全身合併症の治療をすることです。


    内科的治療:発症から2週間以内の薬物治療について
    (1) 再出血の予防:血圧のコントロール

      脳出血の発症6時間以内は再出血が生じやすいので、収縮期血圧120ー140mmHg程度に降圧します。(特に、発症1−2時間以内は血腫がさらに大きくなりやすい。) 降圧剤は静注、あるいは、点滴で使用する降圧剤を使用します。
      脳梗塞の急性期と同様に脳出血の急性期には脳の自動調節能が障害され、脳血流が血圧に依存するので、急性期に降圧を行うと血腫周辺部の障害が進行するので降圧は行わないとの意見もありますが、再出血が生じると明らかにその後の経過が不良となるので、再出血防止の方がより重要と考えられます。 発症24時間以降は原則として内服薬に移行します。

    (2) 脳浮腫の治療ーグリセロール使用について


     急激な脳圧低下のために再出血を助長する可能性があるので原則として、発症24時間以内は使用しません。

      (a)  発症直後(搬入直後)から使用する場合

    瞳孔不同や除脳硬直肢位などの脳幹障害を示唆する徴候を認める場合には、直ちにグリセロール使用を開始するとともに、緊急手術を考慮する必要があります。
      (b) 発症12時間前後から使用する場合
    JCSK-20からL−100程度の意識障害を伴う脳出血では発症12時間前後からグリセロール使用を開始します。

    (3) 全身の合併症に対する治療

     脳出血に伴って、胃潰瘍、肺炎、尿路感染症などが起こりやすく、それが全身状態、意識レベルを悪化させることがありますので、治療を要します。

    (4) リハビリ開始の目安について

     ベット上で臥床状態で行えるリハビリは発症急性期から行います。起立および歩行訓練などは意識障害のない症例では発症後3ー4日ごろから開始しますが、意識障害がある症例では脳浮腫の終了する7ー10日ごろから開始します。やはり、高齢者ではできるだけ早期リハビリを開始する必要があります。

    外科的治療

      脳出血の程度が強く、血腫によって生命中枢である脳幹が圧迫される場合には、救命を目的として血腫除去術が必要となります。既に昏睡で瞳孔が散大し、自発呼吸が停止し、脳幹障害が完成している場合は手術の適応はありません。また、脳幹そのものに出血した場合も手術の意味は極めて低くなります。外科的治療法には、全身麻酔下で開頭して顕微鏡手術にて血腫を除去する方法と、局所麻酔下で穿頭(小さな穴を開ける)にて定位脳手術装置を用いて細い管で血腫を吸引、ドレナージする方法があります。前者では、発症直後の比較的大きな血腫に対して行われ、急性期にはなお出血している血管があっても顕微鏡下に確実に止血出来る特徴があります。後者では患者さんに対する侵襲が少ない長所がありますが、血腫除去が十分でなかったり、術中出血に対しては止血が困難な危険があります。また最近では、脳内視鏡を利用して穿頭下に脳実質内だけでなく脳室内までより確実に血腫を除去する方法も行われつつあります。血腫が大きく脳浮腫が著明な場合は、脳圧のコントロールのために血腫除去だけでなく骨弁を一時的にはずす外減圧手術を行うこともあります。
     
           
     
      目次 > 治療法 > 脳卒中の治療  
       
      急性期の治療で特に重要なポイントは再出血の防止と脳血管攣縮の対策です。 再出血は初回出血から24時間以内、ことに6時間以内に多く、再出血を起こすと死亡率は高く、後遺症を残す率も高くなります。激しい頭痛のため不穏状態になることが多いので、鎮静および鎮痛を十分に行い、厳重な呼吸・循環管理のもとに、必要な検査を迅速に進めます。再出血を防止する最も効果的な治療は開頭手術である脳動脈瘤クリッピング術です。この方法は長い歴史があり、治療法のスタンダードとして確立しています。もうひとつの治療法は脳血管内治療で、開頭手術ではアプローチ困難な動脈瘤や、心臓病など全身疾患や、高齢で開頭手術のリスクが大きいか不可能なケースを救済するために開発が進められました。この治療法は1990年代の初めにGDCという柔らかなプラチナ製のコイルが開発されてから安全、確実に治療出来るようになり正式に認可された治療法となっています。


    (1) 開頭手術


     全身麻酔下に頭蓋骨の一部に骨窓を開け,頭蓋底と脳との隙間を開きながら、親血管を剥離し動脈瘤に到達します。動脈瘤壁は非常に薄くなっていますので、術中に破裂しないように注意して顕微鏡でよく確認し動脈瘤を剥離して動脈瘤柄部にクリップをかけます。親動脈からの血流を完全に遮断することで、今後破裂する心配がなくなります。動脈瘤周囲にある細くても非常に大切な血管や神経は一本でも損傷しないことが重要ですが、破裂動脈瘤の手術の際には救命のため止むを得ず犠牲にせざるを得ない場合もあります。

     頭蓋底に埋没した動脈瘤に対しては一部頭蓋底を削除して視野を得る操作を追加します。10oを超える大きな動脈瘤では複数のクリップが必要になったり,親動脈を遮断することがあります。また小さくておわん型動脈瘤ではクリッピングできず瘤壁を包んで補強するラッピングやコーティングする場合もあります。動脈瘤が破裂してくも膜下腔に出た血液は脳血管攣縮を引き起こすので、脳槽洗浄術を行って洗い流します。

    クリッピングを動画で説明します。ご覧になれない方は右のロゴをクリックしてフラッシュ・プレーヤーをインストールしてください。

    (2)脳血管内治療

      動脈瘤の出来ている場所ゆえ開頭手術ではアプローチ困難な場合や、心臓病をはじめとする余病があったり、高齢で開頭手術のリスクが大きいなど開頭手術が困難か不可能なケースを救済するために1980年代半ばから研究、開発されてきた治療法です。この治療法は1990年代の初めにGDCという柔らかなプラチナ製のコイル〔図〕が開発されてから飛躍的に発展しました。マイクロカテーテルの先端を動脈瘤の中にまで進めて、GDCで動脈瘤を詰めて治療します(動画)。激しいくも膜下出血のために、脳血管攣縮が避けがたいと考えられるケースでは腰椎穿刺で細いチューブを脊髄くも膜下腔に入れて、大後頭孔まで進めて線溶剤を注入し、くも膜下出血を洗い流して脳血管攣縮を防止します。

    GDC治療を動画で説明します。ご覧になれない方は右のロゴをクリックしてフラッシュ・プレーヤーをインストールしてください。

    ● 開頭手術か脳血管内治療か 

      それぞれに一長一短がありますので、経験豊富な専門家が一堂に会し、個々のケースについて患者さんの状態、動脈瘤の出来ている場所や形態、神経症候、全身状態等を考慮して、もっとも適した治療法を選ぶのが望ましいでしょう。迅速に動脈瘤を処置して再破裂を防ぐのが治療のポイントですから、動脈瘤の形ゆえ完全に詰めることの出来ない動脈瘤でも、まず超急性期に血管内治療で出血点だけでも詰めて再出血を防止してから血管攣縮対策を講じ、状態の落ち着いた慢性期にいづれかの方法で根治させるという選択もあります。治療成績に関しては当然のことながら、脳血管内治療も開頭手術とおなじように、術者の経験と技量によって異なってきます。脳血管内治療はまだ長期の治療成績が出ていませんが、治療してから数年間の成績は開頭手術と肩を並べるところまでいっています。一般に大きな動脈瘤は塞栓術後、コイルが圧縮されて再発する傾向がありますが、コイルのデザインと物性の改良によって、近い将来に治療成績がさらに向上することが期待出来ます。

    ● 治療が困難な場合 

    - 70才以上の高齢者
    - 以前、脳梗塞、脳出血などの脳血管障害にかかったことがある場合
    - 手術により神経脱落症候の出現の可能性が高いと予測される場合
    - 心疾患、喘息、肝臓障害、腎臓障害、糖尿病など内臓の疾患、代謝性の病気を有する場合

    外科手術の場合は

    椎骨脳底動脈系など頭の解剖学的な特性から、アプローチが出来にくい場所に出来た動脈瘤、それに動脈瘤の直径が2cmをこえる巨大なもの。

    脳管内治療の場合は

    動脈瘤の頸部が細くくびれていない場合、動脈瘤の直径が1cmをこえる大きなもの、動脈瘤のなかに血栓が存在するもの。
     
         
         
       
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